この記事では、IELTSに興味がある方へ向けて、IELTSという試験の概要や採点方法、4技能テストの具体的な内容や、スコアごとの英語力の目安を解説します。
IELTSを初めて受けるという方などはこの記事を通して、事前に知っておくと良いIELTSの基礎知識を理解できます。留学や移住などの目的でIELTS受験を検討している方は、ぜひこの記事をIELTS理解の第一歩として活用してください。
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IELTSとは?
はじめにIELTSとはどういった試験なのか、概要や特徴を解説します。試験方式やスコアの有効期限などもお伝えするので、ここで基本情報を押さえましょう。
IELTSの概要
IELTSは、国際的に認知度の高い英語能力試験であり、多くの英語圏の国々で留学や就労、移住を希望する人々の英語力を正確に測定します。
特に重要な場面、例えば大学への入学や専門職への就職などにおいてそのスコアが重要視されます。
IELTSではリーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの4技能を総合的に評価し、それぞれのセクションでのパフォーマンスが個別にスコアリングされます。
世界各国の教育機関や企業に広く認識されており、特に英語スキルの証明として留学や海外での就業を考えている人にとって、そのスコアは大変価値あるものとなります。
2種類のモジュール
IELTSには、2つのモジュール(試験の種類)があります。高等教育を受けるために必要な英語力を持っているかどうかを判断するための「アカデミック・モジュール」と移住や就労に必要な英語力を持っているかどうかを判断するための「ジェネラル・トレーニング・モジュール」です。
それぞれ詳しく説明します。
アカデミック・モジュールの概要
アカデミック・モジュールは、IELTS試験の一つで、主に英語圏で高等教育を受けることを希望している人向けです。大学や専門学校での学習、もしくはプロフェッショナルな資格を求めている場合に必要とされています。
4つのセクション、つまりリスニング、リーディング、ライティング、スピーキングを通じて、応募者の英語スキルが包括的に評価されます。リーディングとライティングのセクションでは、アカデミックなコンテンツを扱い、高等教育における英語の利用能力を厳密にチェックします。論理的な思考や主張の構築スキルも試されるため、学術的な環境で要求される言語能力の確認が可能となります。
ジェネラル・トレーニング・モジュールの概要
一方でジェネラル・トレーニング・モジュールは、主に英語圏への移住や就労を考えている人々を対象としています。
このモジュールもアカデミック・モジュールと同様、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4つのセクションから構成されていますが、リーディングとライティングのセクションでは日常的な英語を用います。アカデミックな内容は扱いません。つまり、通常の生活や職場での英語コミュニケーションスキルを重点的に評価されます。
リーディングでは、一般的な手紙や説明文に関する問題が出題され、ライティングでは、日常的な状況に基づくエッセイを求められます。これにより、生活や職場における具体的なコミュニケーション能力を実際に把握することが可能です。
IELTSの試験形式
IELTSには3つの異なる試験形式が存在します。コンピューター方式とペーパー方式、オンライン方式です。
それぞれ特徴があり、受験者のニーズや好みに応じて選択することが可能です。ここからは各試験形式について詳しく解説を行いますので、自身にあった試験形式を選ぶ参考にしてください。
コンピューター方式(会場受験)
コンピューター方式では、試験は会場で行われ、そこにあるコンピューター上で行われます。
試験時間はリスニング(30分)、リーディング(60分)、ライティング(60分)、スピーキング(11〜14分)となっており、全体で2時間45分ほどとなります。
試験結果は通常、試験日の5~7日後にオンラインで確認可能です。この方式は、パソコン操作に慣れている人や、少しでも早く結果を知りたい方におすすめです。
メリットとしては、キーボードでの解答なので面倒な手書きの必要がなく、迅速な結果報告が挙げられます。タイピングに自信のある人の場合、ペーパー方式と比べて回答記入時間が減らせるでしょう。デメリットとしては、コンピューターの操作に不慣れな方には操作面でハードルがある可能性が存在することです。また、タイピングが遅い場合は、回答に時間がかかってしまうことにも注意が必要です。
ペーパー方式(会場受験)
ペーパー方式のIELTS試験では、会場で行われ紙による問題用紙に手書きで回答を行います。
リスニング、リーディング、ライティングのセクションでは紙とペンを使用し、スピーキングのセクションは面接形式となります。試験時間はコンピューター方式と同様です。
試験結果は、通常試験日から13日後に公表されます。オンラインで確認可能です。手書きに慣れている方や、コンピューターが苦手な方におすすめです。
主なメリットとしては、コンピューター操作のスキルが不要であり、紙に直接手を動かして答えを記入することができるため、多くの方にとって直感的で使いやすいとされています。一方でのデメリットとして、結果を得るまでの待ち時間がコンピューター方式よりも若干長く感じられる可能性がある点が挙げられます。
オンライン方式(自宅受験)
オンライン方式のIELTSは、特定の技術要件を満たすパソコンと安定したインターネット接続があれば、自宅やオフィスなど、どこからでも受験可能な形式です。
試験時間は、他の形式と同様、リスニング30分、リーディング60分、ライティング60分、スピーキング11〜14分、合計約2時間45分となります。結果は通常、試験日の7日後にオンラインで確認可能です。この形式は、外出せずに試験を受けたい方や、安定したオンライン環境が確保できる方におすすめです。
メリットとしては、移動の手間やコストを省け、自分の慣れた環境で受験できることが挙げられます。一方、デメリットとしては、家庭のネットワークの安定性や、試験中の集中力が外部からの影響を受けやすいことなどが考えられます。また、必要な技術設定を事前に確認し、テクニカルなトラブルに対処できる準備も求められます。
スコアの有効期限
IELTSのスコアの有効期限は、試験日から2年間です。この期間内であれば、留学、就職、移住等の申し込みにおいてスコアを使用することが可能です。
また、受験者には、テスト完了後、一つの公式な成績証明書(Test Report Form:TRF)が郵送されます。この証明書には、4つのスキル(リスニング、リーディング、ライティング、スピーキング)のそれぞれのスコアと、その平均値となるオーバーオールスコアが記載されています。なお、追加で成績証明書を請求することも可能ですが、一定の手数料が発生する場合があります。
多くの組織や機関では、IELTSスコアを英語能力の評価基準として利用します。したがって、スコアの有効期限内に必要な手続きを行い、計画的なアクションを進めることが不可欠です。
IELTSの採点方法
IELTSのスコアは特有のバンドスコアやオーバーオールスコアによって表現されます。これらは受験者の英語力を明確かつ的確に把握可能な形式で表示しています。
ここからは、それぞれの採点法について具体的に掘り下げて解説します。
バンドスコア
バンドスコアとは、IELTSにおける試験結果の表示形式で、受験者の4つのスキル(リスニング、リーディング、ライティング、スピーキング)がそれぞれ1〜9の段階で評価されます。
この「バンド」は、受験者の各スキルにおける英語能力を数値化しています。最低の1は非常に低いスコアを、最高の9はエキスパートレベルを示します(試験放棄の「0」もありますが、受験者のスコアは1〜9です)。
各セクションは独立して評価され、その後これらのスコアが平均化されてオーバーオールスコアとなります。一つ一つのバンドスコアは、特定の言語能力と関連しており、志望する機関やビザの種類によって要求されるスコアが異なります。
このスコアを提示することで、留学先の大学や雇用主は、受験者がどれほどのコミュニケーション能力を持っているかを的確に把握できます。
オーバーオール
オーバーオールスコアは、IELTSの4技能(リスニング、リーディング、ライティング、スピーキング)の平均値を表し、最終的な英語能力を示す指標となります。
オーバーオールスコアもバンドスコア同様、1〜9の段階で0.5刻みで評価され、多くの場合、大学入学やビザ申請といった特定の目的における最低要件として使用されます。
このスコアは、4つのセクションのバンドスコアを合計してから4で割り、必要に応じて最も近い0.5に丸められます。これは英語スキルを正確かつ公平に評価するためのものであり、全てのセクションで均等なスキルを持つことを重視しているためです。
オーバーオールスコアは個別のスキルスコア以上に、多くの教育機関や雇用者によって重視され、特に高いスコアが必要とされる場合があります。これは、個々のスキルが突出していても、総合的なコミュニケーション能力の確認を重要視するからです。
そのためオーバーオールスコアの高さは、バランスの取れた英語力を証明し、国際的な環境でコミュニケーションを行う能力があることを示す、極めて価値ある証となり得ます。
IELTSスコア評価基準
IELTSの4技能の試験がどのような基準で採点されるのかを理解することは、効果的な準備とスコア向上のために不可欠です。
各セクションごとの評価基準と、それぞれのスキルを測るための試験の形式、そして特定のバンドスコアを達成するために必要な平均的なスコアやスコアアップについて、詳しく説明していきます。
リスニングの評価基準
IELTSのリスニングセクションでは、約30分間で40の問題に答えます。このパートは4セクションから成り立ち、各セクションでは異なる状況におけるリスニング力が試されます。
セクション1と2は一般的な日常のシチュエーション、3と4は教育的、トレーニング的なシチュエーションでの会話に焦点を当てています。
バンドスコア7を目指す場合、大体30問正解が必要な基準とされていますが、年度によって微妙な変動が見られます。評価は、情報の把握、キーワードの識別、リスニングスキル全般に対して行われ、これらを基に総合的な判断で英語聴解能力がスコア算出されます。
リーディングの評価基準
IELTSのリーディング試験は、モジュールタイプ(アカデミックまたはジェネラルトレーニング)によって内容が異なりますが、どちらも60分の時間制限があります。
アカデミックモジュールでは3つの長文を読解します。一方でジェネラルトレーニングモジュールには複数のセクションがあり、異なるタイプの文章を読解する力が試されます。
バンドスコアの達成には各モジュールで異なる平均点が必要です。例えばバンドスコア7の達成には、アカデミックモジュールで約30/40点、ジェネラルトレーニングで約34/40点が必要です。ただし、この基準は一般的なものであり、本番の試験では微調整されることがあります。
ライティングの評価基準
IELTSライティングセクションは、タスク1とタスク2の2部構成で、合計で60分間の回答時間が設定されています。アカデミックとジェネラルトレーニングのタイプではタスク1のテーマが異なります。
一方、タスク2では両モジュールで共通のトピックに基づいたエッセイを書くことが求められます。採点は、タスクの達成、一貫性と結束性、語彙の適切な使用、文法と句読点の正確さという4つの基準に基づいて行われます。各基準が総合的なバンドスコアを形成する重要な要素であり、それぞれのセクションで一貫したスコアを追求することが重要です。
「4技能の中で一番厳しい」と言われるほどライティングの評価は厳格であり、多様な語彙と正確な文法使用が特にチェックされます。
スピーキングの評価基準
IELTSのスピーキングセクションは、約11~14分間の試験で、3つのパートに分けられます。パート1では自身に関する問、パート2では指定されたトピックに1~2分間話す課題、そしてパート3ではより抽象的な質問に答える形となっています。
評価基準には、流暢性と一貫性、語彙の多様性と精度、文法、発音のクリアさ、ならびに正確さが含まれます。これらはスコアリングの基盤を形成し、受験者の全体的なコミュニケーション能力を包括的に評価します。
さらに、受験者の一貫したパフォーマンスがバンドスコアを形成し、その英語スピーキング能力を測定します。個々の基準は総合的なスキル評価に寄与しています。
IELTSのバンドスコアごとのレベル
IELTSのバンドスコアは、1から9までのレベルを示し、受験者の英語能力を表します。それぞれのスコアは、一定の英語運用レベルを反映しています。
ここからは、各バンドスコアがどのような言語能力を指し示しているのか、詳細な解説を行います。
IELTSバンドスコア1の目安英語力
バンドスコア1(非ユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
普段英語に触れておらず、使う機会もなく、基本的な単語の羅列以外は理解できない。
- リーディング
普段英語に触れておらず、使う機会もなく、基本的な単語の羅列以外は理解できない。
- ライティング
的外れな回答で、メッセージもない。単語を並べているだけの状態。文型はまったく使いこなせていない。
- スピーキング
英語での会話が不可能。
IELTSバンドスコア2の目安英語力
バンドスコア2(散発的なユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
よく知っている状況下において、ごく簡単な文章の理解ができる。会話のできるレベルではない。
- リーディング
よく知っている状況下において、ごく簡単な文章の理解ができる。
- ライティング
設問の意図に沿った回答ができていない。ごく限られた語彙しかなく、暗記している表現以外は使えない。
- スピーキング
言葉が出てこず沈黙することが大半で、コミュニケーションが取れるレベルではない。発音も正しくない。
IELTSバンドスコア3の目安英語力
バンドスコア3(非常に限定的なユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
よく知っている状況において大まかな意味が理解できる。
- リーディング
よく知っている状況において大まかな意味が理解できる。
- ライティング
設問の意図に沿った回答ができておらず、何を伝えたいのかもわからない。ごく限られた表現や語彙しか使えない。文法や句読点の誤りが多い。
- スピーキング
簡単な文章をつなぐことすら難しく、長い沈黙がある。簡単な語彙を用いたシンプルな受け答えしかできない。暗記した表現をそのまま使う以外はうまくメッセージを伝えられない。
IELTSバンドスコア4の目安英語力
バンドスコア4(限定的なユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
よく知っている状況であれば基本的な英語が理解できる。
- リーディング
よく知っている状況であれば基本的な英語が理解できる。
- ライティング
設問の意図を理解できているが、要点が網羅できておらず形式も整っていない場合がある。繰り返しや不正確なつなぎ語の使用などがあり、読み手に負担をかける場合がある。
- スピーキング
応答にタイムラグがあり、話す速度も遅い。同じことを繰り返したり、言い直したりすることが多い。発音についても間違いが多く、文法の誤りもあり相手に正確に意図を伝えるのが困難。
IELTSバンドスコア5の目安英語力
バンドスコア5(中程度のユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
部分的に理解できているが、大半が間違っている。詳しい分野であればコミュニケーションが取れる。
- リーディング
部分的に理解できているが、大半が間違っている。詳しい分野であればコミュニケーションが取れる。
- ライティング
課題の要件は満たしているが、意図が不明瞭だったり明確な概要がなかったりするために十分に説明できていない。つなぎ語を適正に活用できていない。最低限必要なレベルの語彙力。
- スピーキング
沈黙なく話せるが、同じことを繰り返したり言い直したりする。一定のスピードで正確に話し続けるのは難しい。パラフレーズできるほどの語彙力は備えていない。基本的な文型はある程度使いこなせる。
IELTSバンドスコア6の目安英語力
バンドスコア6(有能なユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
間違いもあるものの、概ね聞き取れる。よく知っている状況では複雑な表現も理解できる。
- リーディング
間違いもあるものの、概ね聞き取れる。よく知っている状況では複雑な表現も理解できる。
- ライティング
適切に概要が伝えられており、要点も十分に強調できている。ただし、詳細の関連性や正確性に課題が残る。基本的な単語は使えている。
- スピーキング
言い直しや繰り返し、言い淀みなどがある。議論に必要な語彙力やパラフレーズするだけの能力を有している。正しく発音できることも、間違うこともある。
IELTSバンドスコア7の目安英語力
バンドスコア7(優秀なユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
たまに間違うが、ほとんどの場面で複雑な言葉も理解できる。
- リーディング
たまに間違うが、ほとんどの場面で複雑な言葉も理解できる。
- ライティング
課題の要件を満たしており、明確に概要や意図が記述できている。強調や箇条書きを効果的に使用できる。全体的にまとまりのある文章が書ける。
- スピーキング
難なく長く話し続けられる。難易度の高い慣用句も用いてテーマについて議論ができる。概ね正しい文法を使いこなせる。
IELTSバンドスコア8の目安英語力
バンドスコア8(非常に優秀なユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
たまに間違うが、概ね英語を理解できている。
- リーディング
たまに間違うが、概ね英語を理解できている。
- ライティング
課題の要件を満たし、強調や箇条書きなども使いこなせている。論理的に広い観点で文章をまとめられる。多くの構文を使いこなし、間違いはごくまれ。
- スピーキング
たまに間違うが、概ね問題なく会話できる。必要に応じてパラフレーズも可能。間違いはごくまれ。
IELTSバンドスコア9の目安英語力
バンドスコア9(エキスパート・ユーザー)の目安英語力を技能ごとに解説します。
- リスニング
非常に高いレベル。ネイティブと同等。
- リーディング
非常に高いレベル。ネイティブと同等。
- ライティング
課題の要件を完全に満たしたクオリティの高い文章が書ける。
- スピーキング
どんなテーマでも流暢にネイティブと変わらないレベルで発話できる。ネイティブでも犯すミスくらいしか間違いがない。
日本人のIELTSの平均スコア
IELTSスコアにおける日本人受験者のパフォーマンスを考察してみましょう。日本人の平均スコアは各モジュールで以下の通りです。
リスニング:6.0
リーディング:5.7
ライティング:5.7
スピーキング:5.7
オーバーオール:5.9
日本人受験者のスコアで一番高いのは、リスニングです。今回のデータでは、ほかの3技能は同じスコアとなっています。
このスコアはオーバーオールが同じく5.9の韓国とほとんど同じで、オーバーオールが6.3の中国よりは少し低い水準です。ほかにオーバーオールが5.9の国にはフィリピンとウガンダ、5.8がインドネシアとベトナムです。
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IELTSに挑戦しよう
この記事ではIELTSのスコアとその評価基準について解説してきました。IELTSは、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4技能を評価し、各セクション及びオーバーオールスコアが1〜9のバンドスコアで示されます。
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